木漏れ日の下で

ピアニスト 末永匡 オフィシャルブログ

サンソンを観劇

f:id:tadashi_suenaga:20210625225130j:plain

SANSON

SANSON ールイ16世の首を刎ねた男ー をKAATで観劇。 

sanson-stage.com

常に訴えられ、問われ、深い激動の感情が渦巻く時間。

 

こんなにも心の中がこれ以上ないくらいにドラマチックに反応しているにも関わらず、伝えたい「言葉」は着地点を見つけることができぬまま僕の中で虚しく浮遊している…。全てにおいて「凄み」があり圧倒されました。

 

役者の迸るパワー。それは決して大きな声や動きだけでなく、繊細な声色、間、指先や目の微妙な表情にも強烈に流れ込んでいて…そこに感じるのはもはや演技を超えた「(今そこに実在する)命」そのもの。時に「僕も一市民としてその場にいる」そんな感覚にも。その世界に僕は強烈に引き込まれました。

 

そして、やはり自分の職業柄ベートーヴェンとの比較も考えてしまうわけで。

 

サンソンは1739年生まれ。

ja.wikipedia.org

 

ベートーヴェンは1770年生まれ。

ja.wikipedia.org

 

フランス革命ベートーヴェンにとってもか欠かせない出来事。ルイ16世が処刑されたのは1793年。「ベートーヴェンがウィーンへ行ったのは1792年だからその翌年かぁ」とか「◯◯を作曲している頃かなぁ…」など観劇しながら思ったり。

 

www.no9-stage.com

 

No.9を思い出しては、二人(サンソンとベートーヴェン)の感情の行方に思いを馳せ。この激動の時代、この二人だけでなくその時に生きた人間一人一人に強烈なドラマがあるんだよな、と改めて。もちろんこれはフランス革命期に限らずだけれど。一人の人生にスポットを当てて見えるものが何と多いことか…!


白井さんの演出、中島さんの脚本、三宅さんの音楽、稲垣さんはじめ役者の皆さんの演技、そしてそれらを支えている多くのスタッフの方々全員の情熱の集約を感じました。全ての関係者に最大の拍手と感謝をもう一度ここで送りたいと思います。

 

素晴らしい時間をありがとうございました!

レッスン&弾き合い会を終えて

f:id:tadashi_suenaga:20210623102919j:plain

緑を眺めながら音楽を

今日は朝から続いた音楽の時間も気づけば夕飯前。ベートーヴェンラフマニノフシューマン、バッハ、シューベルトモーツァルトと一つだけロシアものがありつつほとんどがドイツものの1日でした。このブログを書いている今も(夜の10時頃)頭の中には無数の音たちが…。

 

弾き合い会も大変有意義な時間となり、このような時間を定期的に設けていく必要性を改めて強く感じました。

 

印象的だったのが「集中された中、人が音と向き合っている姿勢に深く感動する」と参加された生徒の言葉。

 

複数人で演奏を披露し合う場合、さまざまな視点で曲についての表現やテクニック、互いの良かったところなどの気づきを共有するけれど、「人が音と向き合う姿」という言葉は、何かこう音楽の”原点”というか、コロナ禍の今(皆で共有することの難しい状況)改めてそれを感じることがとても深く響きました。

 

参加人数が2〜3人だからこその風通しの良さというか、音はもちろんのこと、語り合う言葉一つ一つ、時に考え込む静寂さえも心地よく、ふと目に入る風景、全てがゆっくりと染み込んでくるかのように深く味わう…そんな時間。

 

「誰かに聴いてもらう」

 

ただそれだけのことが何と輝ける瞬間なのだろう、そんな思いが終始心を漂っていました。

 

音楽を純粋に味わい、楽しむ。

 

厳しい練習も、困難な課題も、変化や成長の道のり全ては、結局その気持ちの上に成り立っているものです。というのも僕の恩師の受け売りですが。

 

おわり。

あなたにとっての「特別な」時間であること

 

汐留ベヒシュタインサロンでのレッスン
80名入るホールにフルコンD282(奥)とA175(手前)が並ぶ

5年前に始まった「特別レッスン」。


ベヒシュタインピアノの特徴が最大限に活かされたレッスンは、これまで累計150名以上の受講者と共に音楽を創ってきました。


新型コロナの影響でストップしていたこの企画も「これ以上待たせるわけにはいかない」と急遽企画を再開。


「この時間が再び企画されて本当に嬉しい」と涙を浮かばせながら伝えてくれた受講生。胸にくるものがありました。再会、出会い…いろいろあります。


ブラームスベートーヴェンショパンなど、今回も充実した曲目。


素晴らしいピアノ、ホールという環境だけでなく、これからどのような「特別レッスン」として在るべきか、ベヒシュタインジャパンの担当者と話し合い。


ベヒシュタインピアノの魅力、レッスンでの気づきや変化、成長はもちろんのこと、個人的な悩みや問題点等の解決に少しでも力になりたい。そういう思いがあることを両者で確認。2021年12月までのスケジュールも決定。


あなたにとっての「特別な」時間(レッスン)であること。


次回以降の詳細は近日中にお知らせできると思います。


受講生、ベヒシュタインジャパンの全ての関係者に心から感謝いたします。


朝に

自宅の庭で

「雨上がり、好きなの」と妻。


子供達も登校し、庭に出て草花を見る静かな朝。


ドビュッシーの練習を終え、久しぶりに妻とブラームスクラリネットソナタ1番2楽章を。


「こんな感じで歌ってみよう、ここで早めにブレスとってみよう、ここはテンポで…」と結構本気なリハーサルが始まってしまい。2人とも音楽家なので仕方ない。


本当に素晴らしい作品。


何十回と弾いてきた作品だけど今もなお潤う朝のように新しい。

--

コツコツと

 

Mozart piano concerto KV488

焦ってもすぐにできるようにはならない。


落ち着いて、丁寧に進めていくこと。


大抵のことは時間がかかるからこそ、じっくりと地中深くまで水が浸透していくように「経験」という栄養を与えていく必要がある。いつ芽が出るかはわからないけれど。


すぐその場で答えがほしい、すぐにできるようになりたい(その気持ちもわかるけどね)、そう思う人は多いのか、そういう人に限って結局じっくりと取り組むことはできない。焦ってしまう。


考え、咀嚼し、ゆっくりと理解に導き、練習を重ね、少しずつ少しずつ…。


上達とは薄皮一枚一枚を重ねていくようなもの。


途中は実感がなくともある時に気がつくと分厚い本ができている。


「これを聴くといいよ」

聴かない。もったいない。


「これをやるといいよ」

やらない。もったいない。


「やります!」

やらない。もったいない。


学ぶこと、大切なことは「信じる」こと、なのかもしれない。


ある生徒は今モーツァルトのピアノ協奏曲を勉強中。オーケストラスコアの読み方から、同時にチェロとの室内楽や、様々な楽曲を知ってはたくさん聴いたりと、様々な側面から音楽を学んでいる。


悩んで苦しい時もあったけれど、少しずつ、諦めず信じて取り組んできた結果、ようやく色々と繋がりはじめ「楽譜を読むことの楽しさ」「シンプルゆえの難しさ」を知り、勇気をもって次の世界への扉を開こうとしている。


僕自身そんな生徒から刺激を受けないはずがない。


そんな彼女の演奏を聴いる時、心の中でいつも「ありがとう」を思うのです。

レッスンでの一コマ(大学編)

 

Brahms Violin Sonate Op.78

大学での一コマ。


とある学生が演奏したブラームスのヴァイオリンソナタ第1番作品78。


なかなか興味深い考察に他の学生も参加。


僕を含めたそれぞれの考えを皆で言い合い「なるほど」とそれぞれの「違い」を知り、受け入れる。


これこそが複数人で学ぶ意味があるというもの。いやぁ、僕も多くを学びました。


楽語(音楽用語)や記号(スタッカートやディミヌエンドetc...)も、例え同じことが色々な箇所にあっても、一つの表面的な意味合いで理解するのではなく、音楽的文脈によりその意味の中に様々な表情を含みうる…ということは文脈(や構造)を理解するために結局は総合的にいろいろなことを知っていなくてなりませんね、というところが本日のポイントでした。


1言ったら20くらい返ってくる学生、自己主張をしっかりもっている姿勢に心から嬉しく思います。僕も学生たちから学んでいる。


僕は基本的に自分のレッスンは全て公開にして聴講してほしいと思っているので、コロナがなければ大学の学生たち全員と共有したいくらい。


にしてもこの冒頭よ。全てを受け入れてくれそうな優しさと温もりに思わず泣き崩れそうです。

音楽のある家


引越しも無事終わり、まだまだ荷物は片付かないけれど仕事場は確保。静かで穏やかな風が優しく吹き込む今日。レッスンも開始し、頭がいっぱいなればお互いに庭に出て心をリフレッシュ。ドイツ時代を思い出しました。僕にとって音楽と自然は深く結びついています。
 
感染防止にしっかり努めつつも、やっぱり対面のレッスンはいいですね。新しい生徒が来たり、音大受験生が来たり、1年ぶりに対面をスタートさせた生徒も。けれど内容によってはオンラインの方がいいなぁ、と思うことも。ハイブリッド型のレッスンを希望される方もいらっしゃいます。なるほど、と納得。
 
その後は都内に出てリハーサル。ベートーヴェンやらラヴェルやら。コンサートのプログラミングなど。ベーゼンドルファーが豊かな音色を届けてくれました。
--