木漏れ日の下で

ピアニスト 末永匡 オフィシャルブログ

やってみなければ見えてこない

 僕のところでピアノを学び続けて十数年の生徒。独学で作曲を学び作品を残し続けています。現代アートのイベントでも使用されたり、本人もそれ系のイベントには積極的に足を運んでいる模様。

 現在ベートーヴェンピアノソナタ第8番「悲愴」の2楽章を学び始め、前回のレッスン時に「弦楽四重奏への編曲を試みよう」という話が出て早速やってみることに。すると生徒が一言。


「まずはやってみます。そこから問題点が見えてくるかもしれません…」


 この「まずはやってみる姿勢」が彼女の強さなのでしょう。間違いを恐れずトライすること。学びの基本姿勢でもあります。もちろん専門書などを読んで知識を得ることも絶対に必要だけれど、それだけでやった気になり満足していては意味がありません。「実際の現場を体感すること」これがいかに大切なことか。頑張れ〜!

初めての2台ピアノ

 ピアノをコツコツと続けている長女。今回初めて2台ピアノに挑戦してみました。いつも耳にしているのとは異なる響きに目を大きく開けて驚きながら弾いていました。

 先日、作曲家の加藤氏の自宅に家族で伺うことがあり「折角だから感謝の気持ちを込めて、加藤作品を本人の前で演奏しよう」と急遽決めて。作曲家本人も喜んでくれたようです。(ですよね?加藤くん?笑)

 ソロはもちろん、4手連弾とも違う「線が絡むように入り混じる響き」を耳にしながらの演奏は娘の興味をさらに掻き立てたようで、しかもいつも演奏している作品(ベートーヴェンとかバッハとか)は作曲家がすでにいないけれど、今回のように「作曲家を目の前にして本人の作品を演奏する」経験は貴重な体験となりました。

 楽譜の中に一つ疑問点があり本人に聞いてみたら「多分こう言うことなのかなぁ…もしかするとこうかもしれないしね…わからないなぁ」と。これがまた作品が「生きている」ということなんだと思います。

友人から渡されたもの

 「末永くんに渡したいものがある」と友人が貸してくれた一冊の本。パウル・クレーの「教育としてのスケッチブック(と言うのだろうか?)」。

 先日、桐朋ブーレーズの「クレーの絵と音楽」からの言葉が引用されていて、この種の翻訳は難しいという話で盛り上がり。そういえば学生時代に読んでいたフルトヴェングラーの本もなかなか難しい言葉だったなぁ、とうっすらとした記憶を辿ってみたり。

 「その本はいい感じに訳されてるの?」と質問したけれどなんかモゴモゴとした返答が。で、渡されたのがこの本。まさか原書とは。笑

 ゆっくりと読み進めてみよう。パラパラとみてみたけれど面白そうです。

 そうそう、学生時代フライブルグ音大のレッスン室に大きなクレーの作品が飾ってあって、その当時弾いていたクルターク作品の背景にクレーの絵を感じたり。個人的な感覚です。

 この歳になってクレーがまたポツリポツリと僕の周りに姿を表してきました。これから何に繋がっていくのだろう?静かに期待して様子を見たいと思います。スイスのベルンにあるパウルクレー・センターに行ってみたいですね。

www.zpk.org

 

現代音楽も古典も同じ。違いなんてない。

 作曲家の友人に誘われこちらのイベントのために母校(桐朋)へ。

「作曲公開講座:現代フランスのピアノ音楽について」

 「理論ピアノ」とは桐朋独自のもので、専門が作曲科でもピアノも主科と同様に学べるというもの。単なる副科ではなくダブルメジャーのように学べる。大変だと安易に想像できるけど「音楽を学ぶ上で極めて理想的なもの」と強く感じます。その逆があってもいいですね。

 フランスはリヨンから来たヴィシャール氏の素晴らしい演奏の他、公開レッスンでの興味深い刺激的なお話はとても勉強になりました。ホールでは作曲家の鷹羽先生と25年ぶりに再会。貫禄とオーラに圧倒され。そしていつも親しくさせてもらっている作曲家の加藤先生森山先生が。そして学生時代から知っている懐かしい桐朋の先生方。

 学生たちの素晴らしい演奏に感動を隠せず。(いつ練習してるんだろう?)質疑応答でヴィシャール氏が語った「現代音楽も古典も何も違いはない」という言葉に強い共感を覚え。これまでいろいろと現代曲を弾いてきたけれど「音と向き合う」道を探求すればするほど、時代という時の差はさほど重要ではなくなってくるように感じるのです。

《曲目》
Olivier Messiaen: Mode de valeurs et d'intensités, Île de Feu 1
György Ligeti: Étude Désordre
Pierre Boulez: Incises
Debussy: Reflets dans l'eau
Tristan Murail: Cailloux dans l'eau, Estuaire II. Au mélange des eaux, Mandragore

 
 昨年12月に作曲の加藤先生が呼んでくださり、高校生対象の講義をすべく桐朋を訪れたばかりだったので、この学校に再訪できたことが幸せでした。「こんな空気で育ったんだなぁ」と自分の中に在る桐朋のDNAを感じたり。

 この企画はぜひ今後も続けてほしいし「他の音大生も呼んでボーダーレスに学べる場」として提供してくれたら嬉しい。超絶刺激的で豊かな時間だから。確かドイツはフランクフルトの音大で作曲家のラッヘンマン氏を呼んで「GOT LOST」のレクチャーがあったとうっすら記憶が。ソプラノの角田裕子さんと『近江の春びわクラシック音楽祭2018』で共演したのが懐かしい。本当にエキサイティングだった。

 昭和音大でもあればいいなぁと遠い目をして思ったり。いやはや、楽しい時間は多くを語ってしまいますね。

〜熱情ソナタ再び、ベートーヴェンから現代へ「おとの鳥」で伝えたいメッセージ〜

2008年から始まった「おとの鳥」コンサートシリーズ第9回を11月4日(土)に開催することと致しました。「おとの鳥」もここまで辿り着いたか、という気持ちです。


▪️2023年11月4日(土)
▪️14:00 開演 (13:30 開場)
▪️入間市文化創造アトリエ・アミーゴ

▪️お申し込み / お問合せ
Atelier Wannsee(アトリエ・ヴァンゼー)
TEL: 04 2006 2139
メール: concertinfo118@gmail.com

ファミリー 3,000 円
大人 2,500 円
学生 1,000 円
中学生以下無料 ・未就学児「大歓迎」です!

・ファミリーはご夫婦のみも含みます。
・本公演における収益の一部はアートまたは教育事業の 支援に活用させていただく予定です。

3週間ほど前から手の不調があり様子を見ていました。その後少しずつ回復の兆しが見られ、今回の「おとの鳥」は特別な位置付けということもあり開催を決意いたしました。手の調子を伺い間際のご連絡になってしまったことを心からお詫び申し上げます。


ぜひご家族ご友人の皆様をお誘い合わせの上お越しください。また、ご無理のない範囲で周知のご協力をいただければ大変嬉しく思います…!気軽にご連絡いただければ幸いです。

宜しくお願い申し上げます。

末永 匡

朝を香るアメリカ


生徒からアメリカはロサンゼルスのお土産。

現地では実に良き時間を過ごせたとのこと。
その時の話を語る彼の表情がなんと幸せそうなことか。

ゴールドベルク変奏曲のアリアを勉強し始めた昨日のレッスンを思い出しながらコーヒーを静かにいただきました。

いい感じに軽く、爽やかな風味。
リビングがいつもより静かに、時間の流れが少しゆっくりに感じます。ありがとう。

Guten Morgen!

良い朝。
今日はきっと素敵な1日になる気がする。
二度と戻らない瞬間を大切にして積み重ねていきたい。
人生は有限なのだから。

今日も音楽的な1日が始まります。
まずはコーヒーを。