木漏れ日の下で

ピアニスト 末永匡 オフィシャルブログ

価値観


室内楽をするといつも思わされるのが「自分の限定された視野」。

 

そうはならないように努めていても気がつけば自分の視野という”限定された範囲”を作ってしまっている。

 

不思議だよね。作品に対して「これでもか」っていうくらい色々なことを感じて考えて向き合っているのに、室内楽をすることでその世界は終わりを見せず、寧ろさらに広がり続けていく。

 

100人いれば100通りの見方や感じ方があるというのは今更感な言葉。どんな本にも載っているし、どこでもでも耳にする。このブログを読んでくれた方にとっても新しいことでもなんでもないはず。

 

でもね、そんなわかりきったことでも新たな価値観に遭遇すると、その世界の広がるさまに驚いてしまう。

 

その新たな価値観に対する驚きは、作品を自分で見つめれば見つめているほど、その濃度が濃ければ濃いほど大きくなる。

 

「あー、なるほどなぁ!お面白いねそれ!」って。

 

それは自分の世界を一層広げてくれる。

 

…けれど、昔の自分はそう簡単にこうは思えなかったのも事実。衝突を繰り返し1人で鬱々としていた。思い描く理想ばかりに目が行き、その通りにならないことに苛立ち、思ったようにいかない自分とも向き合えず。理屈ではわかっていても心の底からは受け入れることができなった。

 

当たり前のことが当たり前のようになるまでどれくらいの時間を要しただろう…

 

僕の場合は少なくとも15年以上は必要だったんじゃないかな。「受け入れること」…これは特別なことでもなく、当たり前のことなんだけど。

 

自分の気づかぬ、自分とは違う価値観と出会ったら「感謝」しかないんです。

よみがえる

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実家に眠っていたYAMAHA C5のグランドピアノ。

自宅アトリエに運び入れるため、オーバーホールとまではいかないまでもかなりの手直しを。アクションは現場でできないので1度工房に持っていきメンテナンス。それだけでも結構な日数を要し、本日はアクションが戻ってきてから作業2日目。後もう1日作業をしアトリエに搬入予定。その後も数回整調やら調律を。

このピアノとの思い出を鮮明に思い出すなぁ……(しみじみ)。当時の苦楽を共にしたこのパートナーが息を吹き返し、生き生きとした声を持って新たに甦る姿が待ち遠しい!

問題なく搬入を終えれば、自宅にはベヒシュタインとヤマハのグランドピアノ、そして第二次世界大戦時に熊本で被災したアップライトピアノの3台が。

それぞれの音色が我が家で響き渡るのを想像するだけで胸が高鳴るのです。

調律師の依田さん、ありがとうございます…!

弦楽四重奏から

 
気付けば昨年からコツコツと続けてきた編曲シリーズ。モーツァルト魔笛から2つのアリアを使った変奏曲風のトリオ&デュオ、ラフマニノフパガニーニのやつ(説明が雑だね)のピアノソロ版、トトロの華やかなピアノソロ&トリオ版、歌曲の器楽デュオ版など。他の小さい作品を含めると自分にとっては結構な数に。
 
全ては自分の勉強のため。
 
その中でも現在僕にとって重量級なのがベートーヴェンピアノソナタ弦楽四重奏版。もちろんこれも自分の勉強のため。
 
自分の未熟さ、無力さを痛感しながらも調べて書き続ける日々。けれどこれが自分の音楽にどれだけ強く深く影響を与えているか。言葉では言い尽くすことのできぬ豊かさ。
 
身をもって「体感」することがとにかく重要で、それがなければどんなに立派な言葉も虚しく空回る。虚学、なんて言葉を思い出したり。知識に血肉を与えたい。
 
指導においても生徒たちに伝える言葉は「生きたものでありたい」。経験に基づく生きた言葉。
 
そんな中、先日生徒がベートーヴェンピアノソナタ2番を弦楽四重奏に編曲してきた。恥ずかしそうに手渡す生徒。素晴らしすぎる。こんな僕がいうのもアレだけど、色んなところがおかしくて不具合多数。けどね、その心構えだよ。本当に素晴らしい。頑張れ高校生!

アトリエコンサート

毎日いくつものドラマがありすぎて投稿が間に合わないだろうと思い結局投稿せず今に至り…あららら。
 
自宅アトリエでのコンサート2回公演。ベートーヴェンシューマン。久しぶりの幻想小曲集、そして詩人の恋では自分なりに解釈した対訳を。なんと芸術的で素晴らしい1日だったか…!今日という日を迎えるまで重ねてきた練習は豊かな学びの連続で、まるで映画のストーリーのように素敵な日々でした。お客様に溢れるアトリエはなにか嬉しそう。
 
ここがなぜ「Atelier Wannsee(アトリエ ヴァンゼー)」という名で呼ばれるのか?そんな話も温かく添えてみたり…。
 
皆様に心から感謝申し上げます。
次回は7月を予定しています。

《リハーサルの前に》

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昨日はカモミールティーと言ったけど、コーヒーを飲みたくなってしまった今朝。親が使っていたコーヒーミルを直しながら使ってます。

「古さ」とは何かの「背景」があること。

過去に在るものと、今見えてるもの…その狭間に惹かれます。

さて、今日はこれからベートーヴェンピアノ三重奏「街の歌」のリハーサル。

今から226年前に作曲された作品。何度も弾いてるけど「何度も弾いてるから」と思ったらそこで終わり。「常に新しい気持ち」で楽譜を開き「今の自分」で取り組みたいものです。

そろそろチェリストが到着するかな。

《採れたてのハーブで》

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今朝、妻が庭でジャーマンカモミールを収穫しました。それで淹れてみたカモミールティーの美味しさと言ったら…!

ドイツに住んでいた頃よく飲んでいましたが基本的には全て乾燥物。今回のような生で飲んでみたのは初めて。なんとも角がなくまろやか。個人的には乾燥の方が香りはあるかな?

庭に大量に咲いているのでしばらくカモミールティー生活が続きそうです。

そんな中、今日はベートーヴェンの歌曲「希望に寄せて」とじっくり向き合いました。言葉と音がどう組み合わさっているのか、作品32と94を今週末22日に演奏するのでさらに深めていきたいと思います。ハーブティーを飲みながら。