木漏れ日の下で

ピアニスト 末永匡 オフィシャルブログ

最後のベヒシュタイン倶楽部を終えて


たくさんの思い出が詰まっている武蔵ホール。

今年いっぱいで閉館のお知らせは本当に悲しかった。

それ故に、昨日のベヒシュタイン倶楽部は過去最高人数の参加者。皆さん口を揃えて閉館の悲しさを訴えていました。
武蔵ホールがどれだけ愛されていたか、と言うことですね。また、ホールだけでなく支配人代理の白水さんのお人柄に親しみを感じられいたのだ、とも思います。

白水さんがいなければ今の武蔵ホールはなかったでしょう。そして彼女によってどれだけの人たちがベヒシュタインを知り、興味を持ち、音楽談義に花を咲かし輪が広がったか。
ベヒシュタインピアノを心から愛し、その魅力を一人一人のお客様の目と向き合い伝えてきた白水さん。「白水さんいるかな?」と武蔵ホールをのぞいたこともあります。そうやってフラリと立ち寄ったのは僕だけではなかったことを後で知りました。

ホールとは担当されている方の人柄が反映されるものなんですよね。ふと、コンサートもそうだなぁ、と思ったり。主催のキャラクターがコンサート全体の空気感に反映される。

昨日の皆さんの演奏は本当に素晴らしかった。技術も大切だけど、それだけでは決してなすことのできない「心から映し出された表現」。それを確信させられた数々の演奏。

僕はこういう演奏を音大生や若い子達にも聴いてもらいたいと思っています。昨日参加されたほとんどの方は、生活の中で限られた僅かな時間をピアノに充てている。

「ピアノが好きだから」「音楽が好きだから」「あういうふうに弾きたい」「これはどういうことなんだろう?」

それらの強い思いが彼らを練習に向かわせる、僅かな時間を大切にしながら。そして、その思いは必ず音に宿り聴き手に届く。

終了後も参加者の皆様と一緒にピアノを囲んで語らいました。皆さんの「学び」に対する圧倒的な気持ちから多くの刺激を受けました。

音楽を共有できた幸せな日。
共有することの喜び、これはコンサートも同じかもしれない。

「今日このピアノをみんな弾いていたんだな…」

と、静まり返ったホールの中で1人思いを馳せ鍵盤を見ていたり。
いろんな「思い」が鍵盤にある気がします。

そんな中少しだけ練習して帰りました。

白水さんはじめ、昨日関わった全ての方々に心からの感謝を。