家族と過ごした2時間。
森に囲まれた静かな場所。
そこに広がる田んぼ、そして古民家。
日差しはまだ強いが、心地よい風が自然の香りを運んでくれる。
収穫の日をじっと待つ。
近くにあった木の下で木漏れ日に包まれる。
横になりながら自然の息吹を感じ、虫取りに一生懸命な子供たちを眺めてみたり。
しかし、来週のコンサートで控えているベートーヴェンは中々頭の中を離れてくれない。困った。頭をとにかく休ませたい。
帰宅後、ピアノに向かい作品57の2楽章の各フレーズを対比させるが、ピントがずれている。心が落ち着いていない。何か、こう、ずっと震え、ざわめている感覚。
ここ数年、楽譜から感じ取るもの、見えるものが多すぎて受け止め切れていない。そしてそれは日に日に膨れ、大きくなっている。
作曲家が残した「楽譜」というもの。
それは、あまりにも、あまりにも重く、深い。
僕を不安にさせる。深淵。
しかし同時に温もりと光も存在する。
沈吟し、徐にピアノに向かう日々。
楽譜という存在。
今の僕にはそれは一人の「共演者」と言える。
楽譜であり、人である。
それは決して手放すことはできない存在。
木漏れ日は何も癒してはくれない。
こんなに素敵な時間だったのにも関わらず、結局今日もその深淵に僕を引きずり込んだ。