さて、ようやくステップの話。
80名近い参加者が演奏していき、一人一人にコメントを書いていく。こんなに日本語を書いたのは何年ぶりだろうか。鉛筆を握って出来た凹みと、ほぼ筆記体の日本語は、時に解読を困難にさせました。申し訳ありません。しかしそのお陰でたくさんの漢字を正確に覚えました。
これだけの人数にコメントを書いて思ったのは「書いてる内容は共通していることが多い」ということです。まずはあの様な状況(お客様が聴かれ、舞台で一人で弾くこと)で果敢に挑戦し、最後まで演奏されていることに心からの尊敬と感謝を覚えます。舞台で一人で弾く怖さは僕も良くわかります。けれど怖さだけでなく、その一瞬にしか感じることのできない「感動」乗り越えた「充実感」は、その怖さや不安以上にあったかと思います。
トータル約10時間ほどの審査なのですが、途中トークコンサートをさせて頂きました。今回は参加者のためにBechstein、Steinway、Bösendorferの3台が用意され、それぞれの特長や、様々なメーカーを弾くことについてなどの話をしました。これがまた大変興味深かったのですが、トークコンサートの前まではほとんどの参加者がSteinwayを選んでいたのですが、トークコンサート後は偏ることなくBechsteinやBösendorferを選ぶ参加者もいたこと。
後で参加者から色々と話を聞いてみると予想通り、弾きにくかった方や弾きやすかった方などがいらっしゃいました。
「弾きにくかった…」これは否定的に捉えるべき事でしょうか?そんな事はありません。実はここがとても大切なんです。弾きにくいことを「楽器のせい」にしてしまいがちですが、演奏者のコントロールの問題でもある事を省いて考えてはいけません。打鍵におけるコントロールの能力の不足、でもあるのです。
人は経験を重ねるにつれ「慣れて」いきます。「弾きにくい」ことに出会うということは「それに慣れることによって拡張するスキル」をも意味しています。要するに「タッチの種類が増える」ことなのです。弾きにくい、と感じた瞬間、タッチの種類が増えてくるための「チャンス」を見つけたことでもあるのです。学びの基本姿勢。知らないことを知った瞬間知るためのチャンスを得た、と同じことです。
ですから「弾きにくい」と感じたら、ぜひこの機会に何度も試弾して下さい。楽器との対話を深めて下さい。今まで持っていなかったタッチの引き出しが必ず増えます。
今は「タッチ」についての話でしたが、もちろんそれだけではありません。「聴く力」も同様です。ピアノも、メーカーや型、年代によってその「音色」は異なります。固有の声を持っています。そして「聴く」ことと「弾く」ことは連動しています。当たり前と言えば当たり前なのですが…。
色々なピアノがあるからこそ弾いてみましょう!多様な音色の世界に足を踏み込み、楽器との対話を深めていきましょう!
…のようなことを話したり感じたり。
ステップは初参加でしたが、ベテランの先生方に助けられ、なんとかこの日を終えることが出来ました。全ての関係者の皆様に心から感謝申し上げます。
打ち上げのお店では、画像にある様に名前入りでメッセージがありました。粋ですねぇ( ´ ▽ ` )
長くなりましたが最後に一言。この関西滞在で出会った音楽を愛する方々(プライベートレッスンにお申し込み頂いた方々、PTNAステップにご参加され、直接お声がけ下さった方々など)との再会を心から願っています。
初めてお会いしたのにも関わらず「次回こちらに来られる際はレッスンお願いします!」と嬉しいお言葉を頂いた時は感謝と同時に、そこまでの積極性に感銘を受けました。ありがとうございます!ブログからでも気軽にご連絡頂けましたら幸いです。
教えることは学ぶこと。半学半教。終わりはありません。だから最高にワクワクして楽しいです。